大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1270号 判決

ところで本件賃貸借契約締結に当つて作成されたと認められる契約書二通(甲二、甲三号証)には、賃借人が一箇月分でも賃借料の支払を怠つたときは、何らの催告を要せず本契約を解除したものとし、直ちに土地を明渡すことを約する旨の条項が不動文字で記載してあるので考えるに、かような条項は民法所定の原則に比べ借主を不利に扱うことになるから契約締結の事情を探求して、果して当事者にその特約を結ぶ真意があつたか否かを明らかにしなければ契約としての効果を認めえないものである。しかるに本件では、当事者が特に右条項について話合つた事実も、借主である被控訴人に地代支払を遅滞する虞れがあつた事実も証拠上認めることができず、契約書の様式をみてもいずれも既製の契約書用紙を使用したもので、ほかに「賃借期限は前賃借人の残存期間を承継し」という条項も印刷してあるが、これは本件各契約とは全く事実関係を異にするこというまでもなく、このような条項をそのまま活かして省みなかつた点からみても、右無催告解除の条項は当事者の合意がないものと認めるのが妥当である。従つて民法の原則により、控訴人は解除のための催告をしなければ解除権を取得しないわけであるのに、控訴人はこれをしていないのであるから、解除の通知はその効力がないといわなければならない。

(近藤 吉江 稲田)

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